面会室は、王族が使う謁見室とは異なり、家具や装飾も質素だった。
 しかし、鍵もかかるし壁も分厚い。

 内緒話には持ってこいの部屋で、シュゼットは、ラウルと共にレイリ伯爵と面会した。

「女性だったんですね」

 優雅に足を組んで紅茶を飲むレイリ女伯爵は、名前をジュリーと言う。
 伸ばした銀髪を一つに結い、男性用の宮廷服を着こなすかっこいい麗人だった。

 年齢はアンドレの十歳上だというから、
 三十後半だ。けれど、化粧っけのない顔には年齢以上の若さがみなぎっている。

 ジュリーは、驚くシュゼットににこりと微笑んでカップを置く。

「よく驚かれますが、下位貴族である伯爵や男爵家では女性が爵位を継ぐこともできるんですよ。父はもう二十年前に亡くなって、私は十代で伯爵家を継ぎました。ラウル様が聞きたいのは、父のことですね?」

「ええ」

 ラウルは、テーブルにシュゼットが発見した宮廷録を並べる。
 今から三十年前からの六冊は、保存状態がよく、ほとんど開かれた形跡もない。

「三十年前、現王太后ミランダ様が当時王太子だった前王に嫁がれました。その際、前レイリ伯爵は側近のようにミランダ様に付き添っておられたようですね」

「ミランダ様と父は年の離れた幼馴染だったんです。本当の兄妹のように仲がよかったので、そのご縁でお世話をしていたと聞いておりますわ」

「兄と妹ですか。本当に、それだけの関係だったのでしょうか?」

 まるで取り調べでもするかのように、ラウルの語尾が強くなった。
 シュゼットは彼の凛とした横顔を見つめる。

(何を聞き出そうとしているのでしょう)