振り向けば、大勢の紳士に囲まれたミランダが歩いてくるところだった。

 今日の彼女は一段と大胆だ。
 ホルターネックのドレスは、胸の中央に入ったスリットから豊満な胸の谷間がのぞく。
 体に沿ったデザインは腰から臀部にかけての曲線を美しく見せて、彼女の妖艶さを引き立てていた。

「王太后様、ご機嫌麗しく存じます」

 シュゼットがドレスをつまんでお辞儀すると、ミランダは、紫のアイシャドウを塗ったまぶたを半分下ろして見回してきた。

 どんな難癖をつけられるかと身を固くしていたら、つまらなさそうに息を吐かれる。

「文句のつけようがないくらいお可愛らしいこと。今日は楽しんで行ってくださいませ」
「ありがとうございます」

 シュゼットは足早にその場を後にした。

(今日は嫌みを言われませんでした……)

 それだけで幾分かほっとする。

 主催者への挨拶が済んだシュゼットに、貴族たちが挨拶をしようと近づいてきた。
 愛想笑いの大群に、体がすくむ。

(こんなに近づかれたら、お化粧で隠した傷跡を見られてしまいます)

 シュゼットはおもむろに会場へ目を向けた。

「陛下のもとへ行かなくては。皆さんはどちらにおいでかご存じでしょうか?」

 すると、貴族たちは足を止めて同じ方向を見た。
 人だかりの向こうに、国王夫妻のために用意された壇上の席がある。

「こちらにおいでですよ」