母とおばさんは幼馴染で、親友。おばさんは自分の娘のように私と接してくれる。

「おばさん、聞いてもいい?」

「なぁに?」

「お母さんの初恋相手、おばさんは知ってる? 西園寺さんって方なんだけど」

 にこにこした顔が一瞬で強張った。感情を上手く繕えない素直なところは花梨ちゃんにそっくりだ。

「西園寺さんね、聞いた事はある。けど、それがどうしたの? お母さんと仲良しとは言っても人の恋路を根掘り葉掘り聞いたりしてないわよ?」

「初恋を台無しにする深堀りはしない。私はおばさんがギクッとした理由を知りたい。
 あっ、このお菓子、昔は五連だったのに今は四連になっちゃったんだ。修司と花梨ちゃんで分けて、誰かが一つで我慢しないといけなくて揉めたなぁ」

 懐かしいパッケージをつまみ出し、眺めてみる。
 夏休みーー三人で気が済むまで泳いだ後、けの塩っぱいチップスを食べるのが楽しみだった。日焼けなど気にせず、こんがり焼かれた肌は笑顔をより眩しくして。

「私は花梨ちゃんの事故があって、食べなくなった……あれ?」

 思い出を語りつつ違和感を覚える。青白くおぼろげな遠い記憶の中からこんな声が響いてきたのだ。

『美味しそうだね、僕にも一つくれないかな?』

(あれは、確か)

 額に手をやり、考える。

(島の外からやってきた青年は人探しをしていた。彼に人探しを手伝ってと頼まれてーーそれで)

「奈美ちゃん、奈美ちゃん!」