「おかえりなさ〜い!」

 フェリー乗り場では花梨ちゃんが両手を広げ出迎る。コミカルにぴょんぴょん跳ね、抱き着いてきた。

「ただいま、花梨ちゃん。具合はどう?」

「具合? なんの事ですかぁ〜? 私は先輩に会えたので元気満タンです!」

 昨夜の話をしてくれるなと腰へ手を回す。ぎゅうぎゅうウエストを締め付けられ、隣の修司へ目配せする。

「おい、花梨。まずは言う事があるだろ」

「……」

「花梨」

「ごめんなさい」

 花梨ちゃんから謝罪を引き出すと、改めて修司も言葉を重ねた。

「奈美、すまなかったな」

「ーーううん、私の方こそ色々心配かけてごめんね」

 それぞれ何に対し謝っているのか曖昧でも、つまびらかにする気力が残っていない。

「先輩、兄貴とも相談したんだけど、うちに来ません?」

「え? いきなりどうしたの?」

「おばさんが本土の病院に入院しちゃって寂しいですよね? うちでご飯食べたり、ゆっくりして下さい。少しは気分が紛れますから!」

 ね、いいでしょう? いつものおねだりスタイルだが、実際は私を気遣っての提案だろう。

「でも……」

 なかなか頷かない私の周りを子犬みたくクルクル回る。

「お母さんも先輩の為にご飯を支度するって言ってますし」

「俺は病院へ戻らないから、俺の分を奈美が食ってやって。料理を余らせるのは勿体ないだろ」

 兄妹でタッグを組み、朝比奈家への招待を断る理由を無くされる。

「じゃあ、決定! 行きましょ」