「西園寺のせいだな、こんな風に言い始めるなんて」

 その時、修司の何かしらが軋む音がした。

「修司?」

「外で話をしてくる。ついでに飲み物買ってくるな、水でいい?」

「え、あぁ、出来たら温かいのがいいな。冷えちゃって」

 肘を擦る仕草を添えて返す。寒気が彼由来であるのを気付かない振りし、修司も頷く。

「オッケー」

 了承と部屋を出ていく合図で髪へ触れてこようとしたが、とっさに避ける。

 前に進もうとする足を繋がれる未来が浮かび、警戒心が芽生えたのだ。

 修司は空振った指を暫し眺め、特に何か言うでもなく退出する。

「修司も疲れているんだよね、きっと」

 修司を疑いたくない、自分へ言い聞かす。彼が戻ってくるまで休もう、疲れているんだ。

 眠りに落ちるまでそう掛からず、部屋の外で修司と花梨ちゃんがどんな話をしているかなど考えない。

 まさか私の考えが及ばないところで、足枷をはめられ海へ繋がれる人魚になろうとは……。

 この時点では知る由もなかった。