軽蔑に似た湿度で核心を射抜き、言い逃れをさせない。
 私がパクパクとしか口を動かさず理由を作らないでいると、修司は首筋に手を伸ばしてきた。

「ベルトを締めた時、見えた」

「な、何が?」

「これ」

 ルームミラーを曲げて私を映り込ます。髪を後ろへ流せば真新しいキスマークが現れる。

「しかも一つ、二つじゃねぇ。きっちりマーキングしてある。奈美は自分のものだって見せ付けるみたいにな」

「……」

「正直に言え、御曹司と寝たのか?」

「……」

「言えって。花梨があんなに嫌う男とお前は寝たんだよな?」

 裏切り行為をしたんだぞ、そう言わんばかりに詰めておいて、私より傷付いた顔をするのはズルい。ますます言葉を発せなくなるじゃないか。

「くそ! こんな事になるなら意地でも探せば良かった。お前さ、御曹司と釣り合うとでも思ってる? 遊ばれてるに決まってるじゃないか!」

 目頭を押さえ、修司が泣いてしまいそう。

「奈美、もっと自分を大切にしてくれよ。お願いだから」

 ベルトを装着したまま抱擁するなんて、操り人形みたいだ。私達はあの日の事故、花梨ちゃんの怪我、生まれ育った島に繋がれている。

 似た者同士、彼を愛そうとした事もある。だけど駄目だった。修司が私へ寄せる気持ちと自分の心を重ねられない。