「パーティーで何が起こったか、全部は聞けてねぇけど。花梨がまた迷惑をかけたみたいですまない」

 かぶりを振る。

「それで花梨ちゃんは?」

「明け方までワンワン泣いて、今は薬で眠ってる」

「そう、修司も寝てないんだね」

 寝不足だからだろうか、彼の物言いが少々強い。窓の外へ視線を向けようと乗り心地の悪さが解消しない。

「俺もってどういう意味? 奈美も寝てないのかよ」

「え? な、なに?」

 図星をつかれて正直に声を震わせたのがいけなかった。修司は車体を路肩に寄せ、追求してくる。

「昨日、何があった? なんで花梨を一人にしたんだ?」

「それは」

「電話だって何度もしたんだぞ? どうして出ない? 充電器くらい借りられたよな?」

 修司は質問を矢継ぎ早に繰り出すくせ、表情をハンドルへくっつけて隠す。聞きたいのに聞きたくなさそうで。

「心配掛けてごめんね? 私ならこの通り、元気だし」

 丸まる彼の背を宥めようとしたら、寸でで叩き落されてしまった。

「奈美、お前さーー御曹司に何されたの?」

 低い声で言いつつ顔を上げ、手首を掴んでくる。そればかりか捻って本音を絞り出そうとした。

「ちょ、ちょっと痛いって! 離して! ねぇ、いきなりどうしたのよ?」

「聞いてるのは俺の方だろう!」

 怒鳴られ、文句が引っ込む。

「……馬鹿にするなよ」

「馬鹿になんかしてないよ、何? どうしたのよ?」

「いや、してる。好きな女が他の野郎と寝てきて気付かないとでも思う?」