晴臣さんの首に手を回し、自分から口付ける。テクニックを伴わない私のキスでも彼が硬く張り詰めるのが分かり、夢中で舌を絡めた。

「んっ、んっ、ふ、晴臣さん」

 自分の声とは信じ難い声が鼻から抜けていく。
 こうなると晴臣さんは私の下着を剥がすのに躊躇がなくなり、私も腰を浮かす。

「ねぇ、僕に抱かれるのは見返りなのかな?」

 風がゴウゴウと吹き荒れて、一線を超える予感と共鳴する。シーツの上に打ち上げられた私は肯定も否定もせず、真っ直ぐ見つめ返した。

「……そうか、それでも君を抱くよ。貴女がこんなに欲しいんだ」

 乱暴にシャツを払うと素肌が覗く。品行方正を地で行く彼にも雄がきちんと宿り、疼く。今だけ、今だけは何もかも脱ぎ捨ててしまいたい。

 触れた唇から理性を溶かされ、さらなる熱を吹き込まれる。

 キスだけでひとつになれてしまえるロマンチックと、それだけでは足らないリアリスティックが寄せては返す。

 頭の中がマーブル模様になって選別しずらくなる中、私は呟いた。

「す、好き、晴臣さんが好き……」

 思わず零した言葉に青い瞳が瞬く。快楽に流されたうわ言と聞き流さず、彼はこれ以上ない笑みを見せてくれた。

「あぁ、嬉しい。身体だけじゃなく心も預けてくれてありがとう。大事にする」

 深く繋がる合図として恋人繋ぎをする。

「愛しているよ、奈美」

 私はそれが泡沫の戯言であると承知のうえ、この身を捧げたのだった。