西園寺氏の部屋に入ると明かりをつける間もなくキスが降ってきた。彼は後ろ手でドアを閉め、もう片方で私の後頭部を支える。

「んーーっ、はぁ」

 酸素を根こそぎ奪われ、壁伝いに座り込もうとするが許されない。角度を変えたキスを何度も、何度も仕掛けられて熱が吹き込む。

「ま、待って、いきなり、こんな」

 やっとの思いで広い胸を押し返す。

「いきなり? 奈美が良いって言ったじゃないか?」

 西園寺は煽るよう唇を舐め、息の上がった私を覗く。

「頭では優しくしたい、ゆっくり愛し合いたいって思っているのに。貴女の唇がとんでもなく甘いから悪いんだ」

「そんなーーっ、ん、んっ」

 壁に肘をつきキスを再開する。荒々しくも歯列をなぞる舌は心地よさを引き出し、絡み合う水音で段々と高められていく。

「綺麗な髪、ずっと触れてみたかった」

 一房を掴んで、そちらにも軽く口付ける。

「髪だけは自信があり、ます」

「髪だけ? 奈美はどこも魅力的だよ。全身にキスをしたいくらい」

 太腿を撫でられ、痺れる感覚に仰け反った。天井を見上げ、はふはふと呼吸する。
 ここまできて逃げるつもりはないものの、経験が多いといえない身体がついてこれない。

「あ、あの、お願い、待って下さい。少し怖い」

 泣き言は鼻にかかり、甘えるようにも聞こえる。すると額へ西園寺氏の手が添えられ、汗ばむ生え際を拭われた。