スラスラと不相応な箇所を連ねる。悲しいが、自分が彼に釣り合わない理由は幾らでも出てくる。

「わざわざ父や坂口を引き合いに出さずとも、修司君がいるから僕とは付き合えないと言えばいいのに。だが、僕なら貴女を置いて帰ったりしませんよ」

「この嵐じゃ仕方ないです! 西園寺さんは島育ちでないから分からないと思いますが、嵐を軽視すれば痛い目に遭うんです!」 

「だからと言って貴女を置き去りになんてするものか! 危険を顧みないヒーローを気取りじゃないが、貴女だけは助けてみせます。何があっても、ね?」

「どうしてそこまで私を? 正直、信じられません。会ったばかりですよ?」

 その問いに西園寺氏は襟足を掻く。

「僕にとって初恋なんです。結城さんが居たから頑張ってこられた。格好つけてアプローチをかける事も出来ないくらいドキドキして、恋人がいても諦められない。こんな子供みたいな気持ち、貴女には重荷でしょうが」

「私はそんな風に想って貰える人間じゃない! あなたを利用しようとしていました!」

 キラキラ眩しい物を見る表情に耐えられず、吐露する。

「私の母は西園寺さんのお父様が初恋相手なんです。病気で意識が戻らない母にお父様を会わせてあげたい、そうお願いしようと今夜こちらへ参りました」

 西園寺氏から手を剥がし、自分の胸へ当てた。

「西園寺さんのご厚意ーーいえ、好意に付け込む自覚はありました。申し訳ありません」