ものの数十秒で青い瞳とおそろいの名のカクテルが出来上がった。

「お待たせしました。ブルームーンです」

 冷やしたカクテルグラスが正面に出され、見事な美しさに見入る。西園寺氏はおかわりを注ぎ、乾杯をしようとのジェスチャー。

 リンッ、グラス同士が重なる。

「……いい香りがします。口当たりも爽やかで美味しい」

 湯上がりで喉が渇いたのもあって二口、三口と飲み進める。

「強いお酒ですのでお気を付け下さい。もちろん介抱は喜んでしますが、その場合のクレームは受け付けないよ」

「お言葉ですけど、酔わせてどうこうしようと企む人は正直に言いません」

「そうなの?」

 傾げる西園寺氏。彼も酒量がそこそこなのか、語り口調はともかく仕草が少しだけ幼い。可愛らしい。

「そうですよ!」

 私はきっぱり言い切り、グラスを空にした。

「ーー後ろめたい事がある人間は言わないですから」

 手元でグラスをクルクル回し、語尾に『私みたいに』と加えられないのを誤魔化す。

「その言い方だと、結城さんは僕に対して後ろめたい? レッスンやパーティーの出来事以外であるなら教えてくれない?」

「甲板で……」

「あれはカメラを確認したところ、結城さんこそ被害者。僕の管理が行き届いていなかった為に怖い思いをさせて、申し訳ない。後日改めて貴女が納得いく処置をとるつもりだよ」