「私は金銭目当てじゃありません! 本当です!」

 私の財政まで把握しているのだから、つまらない申し開きなど聞く気はないだろう。

「母は長くないと覚悟しています。だから最期に初恋の人に会わせてあげたかった、それだけで。島で看取るつもりです」

「幼馴染が主治医だそうですね」

「……そこまでお調べになったんですか。えぇ、それが何か?」

「結婚を前提にお付き合いしているとか?」

「……」

「西園寺はあれで純粋な男。婚約者がいらっしゃるなら、誤解される真似は慎まれては?」

「……」

 やりとりを続けても平行線を辿るしかなさそう。黙った私に坂口さんは時間を確認する。

「本題に入りましょう。あまり悠長な事は言っていられない」

 今までが前置きだなんて。他にどんな非難をされるのかと身構えてしまう。

「私から前社長へお見舞いの件を通してもいいですよ」

「え?」

「結城さんが前社長に直接お会いするのは無理です。私からお伝えしましょう」

 思いがけない提案に私の眉が上がる。そしてすぐ下がる。

「それには条件があります。今後、西園寺に関わらないで頂きたい。西園寺が結城さんとの交流を続けようとしたら断って欲しいのです」

「西園寺さんは子供じゃない、交友関係まで管理しなくてもいいと思いますが?


 わたしなりの正論をぶつけてみた。

「プライベートと仕事を切り分けろとの意味でしょうが、西園寺は私の親友でもあり、結城さんが朝比奈さんを擁護するのと一緒です」