私の立ち回りを他人は冷静な判断と見誤るだけで、実際は臆病なだけ。

(嵐にナーバスになっているのは私も同じ、か)

 花梨ちゃんの手を取り、握ってみた。

「傷、残ってしまって」

「はは、こんな傷、痛くないし気にしてもないですよ。兄貴や先輩が止めるのを無視して海に行った罰ですから」

「罰なんて、花梨ちゃんはーー」

「終わった事です、昔話はやめましょ。私は今のままがいい、兄貴と三人で仲良く暮らせればそれで。本当はおとぎ話みたいなトキメキがなくたっていいんです」

 花梨ちゃんの腕には大きな傷跡がある。これは幼い頃についたもので、私と修司の記憶にも深く刻まれている。

「とにかくお水と車を用意しなくちゃ。特に帰りの足が見付かればいいのだけど」

「本当にどうしようもなければ兄貴へ連絡します。しない方が怒られるし」

「そうね、パーティーに参加するのを心配してたし、ひとまず連絡だけでも入れておこうか。あ、私のは電池がなくなりそうだっけ。花梨ちゃんお願いできる?」

「はぁい」

 花梨ちゃんはここで私からの大量の着信に気付いたらしく、眉を下げた。