(キレイな瞳だなぁ、海の色をしている)

 花梨ちゃんは夢から覚めたように西園寺氏を悪い魔法使いと言うが、逆に私は絵本から抜け出した王子様に段々と思えてきて。

 それも優しいだけの王子様じゃない。社会的な立場やルックスなどの分かりやすい魅力の奥、深く誘い込む仕掛けを施して冒険心をくすぐり、私は彼の宝箱を開きたくなる。

「そんな熱心に見られると緊張する。きちんと着替えた後で審査をして貰いたい」

「審査って、別に私は」

「そんなつもりもないと?」

「はい」

 ハンカチがそっと頬へ押し当てられる。折り目正しい生地越しに熱を伝えてきた。

「貴女のお眼鏡に適いたい、そういう意味ですよ」

「西園寺さんなら私なんかじゃなく、もっと優れた人達に認めてもらえます。いえ、もう認められてます」

「僕の言葉を聞いて? 僕は貴女に認めて欲しいと言いました」

「……」

 どうして、尋ねる言葉が出てこない。

「ドレス、とてもお似合いですね。想像した以上に着こなされている。ありがとうございます」

「お礼を言わないといけないのは私で! 色々と手配して下さり、ありがとうございました」

「ご迷惑でなかった?」

 頷く。

「こんな素敵なドレスを着たのは初めてですし、メイクまでして頂いて。なんだかお姫様気分になれました」