パーティー会場ではクラシック音楽がゆったり流され、着飾った人々がグラスを傾け会話に花を咲かせたり。こういった場が苦手な私はたちまち酔いそう、ピンヒールで踏ん張った。

 ささやかな宴という西園寺氏の言葉を鵜呑みにした訳じゃないが、想像以上に華やかで気後れする。
 キョロキョロ視線を泳がす私をよそに、梨ちゃんは持ち前の適応力で周囲に溶け込む。

「先輩もどうぞ」

 シャンパンが入ったグラスを私へ差し出す。

「高級ビュッフェに来たとでも思って、たくさん飲み食いしちゃいましょうよ!」

 参加者等は交流を主な目的にしており、豪華な料理にさほど興味を示さない。花梨ちゃんはそれをいいことにローストビーフをこんもり皿に盛る。

「うん、美味しい!」

「もう、花梨ちゃんったら。そんなに食べられるの?」

「ドレスで締め付けられてる分、いつもより量は食べられませんけど、このくらい平気ですよ! 兄貴にもこんな美味しい料理食べさせてあげたい。あっ、持って帰ったらーー」

「駄目に決まってるでしょ」

「はーい。あっ、見てくださいよぉ〜! 北京ダックまである!」

 その場で跳ねて、喜びを表現する花梨ちゃん。こんな会話を聞かれクスクス笑われていたが、振り向く勇気がなくやり過ごす。

 花梨ちゃんの料理から料理へ渡る様は悪戯な妖精みたいで。私は表面上しかめつつ、美味しい、美味しいと頬張る姿が可愛くて憎めなかった。