ーーならばどうするか?
 私には解決の糸口が細いながらも見えている。しかしそれはフェアーではないので迷いも生じさせた。

 眠る母を見やる。

 この機会を逃せば、母はもう西園寺前社長と会えない可能性が高い。自己満足でも最後に会わせてあげたい。初恋を語る母は報われなかったにしろ、少女のように無邪気で可愛らしかったんだ。


「あの、奈美先輩?」

 花梨ちゃんが携帯電話を携え、こちらの様子を覗く。オーナーから連絡が入ってのだと察して病室を出る。

 きっと西園寺氏はクレームを入れず、穏便に事を済ませた。その上でパーティーの件を話題に出し、報告書を読んだオーナーがパーティーへの参加を促す流れとなりそう。

 西園寺氏が私達に構う理由は物珍しさの延長だとしても、母の初恋相手が西園寺前社長である可能性が浮上。こちらとしても接触したい事情が発生した。

 それと予想通り、通話を代わるとオーナーは叱責より先にチャンスを提示する。私がその交換条件をすんなり飲み込めば花梨ちゃんが見開く。

 自分でもらしくない選択をしたと思う。私は知名度は活用しても、ファン心理に付け込む真似はしてこなかったから。

「行くんですか? パーティー」

 戸惑いがちな問いかけに頷いた。

「ドレスとか諸々は西園寺さんが手配してくれるそうよ。ただ花梨ちゃんはーー」

「私も行きますっ! 先輩を一人で参加なんてさせられませんし! 体調なら大丈夫ですよ!」

「でも……」

「えー相棒を除け者にするんですかぁ? セレブ主催のパーティーなんて婚活に持って来いです。まさか抜け駆けしないですよねぇ?」

 こんな言い草でも責任を感じているそう。個人的な事情に花梨ちゃんを巻き込みたくないのに、不確定な魂胆を打ち明けられず押し切られてしまった。