「奈美、一生会えないでいいのかって聞いたけどさ」

「うん?」

「時間が薬となって、いつかまた以前のような仲に戻れるかもしれないよ」

「……そうだね、そうだといいけれど」

 実はこの先、島の環境保護プロジェクトに幼馴染が招集されるのは未来が待っている。

「きっと大丈夫」

 ただ、この時は晴臣さんしかヴィジョンを描けていない。
 そして花梨ちゃんが窓に張り付き、謝っていたのも後々知ることになる。



 病院を後にし“人魚の涙”が投げ込まれた海辺へ。

 晴臣さんの手を借り堤防をのぼる。眼下に私の知っているようで知らない世界が広がってきらきら輝く。

「ねぇ、晴臣さん」

「ん?」

「“人魚の涙”本当にいいの? 怒られない? 対になっている私のお母さんの分も見つからないままなんだけどね」

 不安がる私の頭を胸元に持っていき、優しく髪を梳いてくれた。

「いいんだ、あれは父達の初恋だろう? ここに置いていく。その代わり」

「その代わり?」

「僕達は僕達の恋愛をしよう“人魚の笑顔”を持って帰るから」

 キスの気配に私の口角が緩む。鏡で映さなくとも分かる。私、前より少しだけ上手に笑えている。

「愛してるよ、奈美」

「私も愛してます」


おわり