「ねぇ、貴女を嫌いになるような事を言うんでしょう? 言ってみて」

「い、言うからーーんんっ! そ、んな深くしない、で」

 一度重なれば離れがたくなる。キスはたちまち深くなり、絡み合う。

「はっ、んちゅ、晴臣、さん、聞いてって、ば」

「聞いてるよ」

「んーっ」

「ほら言ってみて」

 耳を食み、熱い息を吹きかけられた。
 小刻みに揺れる身体は晴臣さんへ寄りかかり、はふはふと酸欠で喘ぐ。

「わ、私“人魚の涙”を無くしてしまったの」

 彼の舌により巧みに解された口は簡単に割れる。

「海へ落としたと思うんだけど見付からなくて、ごめんなさい、ごめんなさい」

 晴臣さんへ抱き着く。嫌いになるかもなんて予防線を引きつつ、本当は嫌われたくない。

「ーーそうか、だからあんな場所に居たんだね?」

 頷く。

「修司君等と仲違いして自暴自棄になった訳じゃないんだな?」

「うん。傷跡が残れば花梨ちゃんの気持ちが分かるかもって思ったけど、もっと花梨ちゃんを苦しめるだけだよね? 私、考えなしだった」

「そうだね、修司君は自分のせいで奈美が溺れたと考え、花梨さんも自らの行動を責めているに違いない。“人魚の涙”を無くしたのは彼女じゃないのか?」

 図星に弾かれ、青い瞳を伺う。