「んだよ、そんなに西園寺がいいか? あいつのせいで俺等はどんな思いした? 今更のこのこ現れて掻き乱す方が悪いだろうが!」

 修司は晴臣さんからの連絡を取り次がなかったのを反省する所か、正当性を主張。

「それでもお見舞いに来てくれたのを黙ってるのはよくない」

「見舞いなんて必要ない!」

「修司が決める事じゃないでしょ?」

 修司も声を大きくするが怯まず、引かない。睨む。

「奈美は俺と花梨を裏切って、西園寺を選ぶんだ?」

「裏切るなんて、私は……論点をずらさないで」

「ずらしてなんてない。思い出さなければ、西園寺を忘れていたって静かに暮らせていたのにさ。ひでぇのはどっち? 奈美だろ」

 勝手に忘れておいて勝手に思い出す、彼の言い分に唇を噛む。確かに私は事故に関する一部を封印してしまった。辛くて、辛くて仕方がなかったから。

「花梨も最初はあの少年が西園寺とは気付けなかったって。だが正体が判明すれば酒をぶっかけたくなるのも、しょうがない」

 くしゃりと前髪を掴み、修司は花梨ちゃんの行動まで正当化。

「……本気で思ってる? それだと晴臣さんへ押し付けてるだけだよ」

「お前こそ本気? 西園寺は素知らぬ顔で近付いてきたんだぞ? おばさんの見舞いに来たのはパフォーマンス、奈美に自分はいい奴だと信じさせる為だ」

「晴臣さんは事故後の私達を知らないんじゃないかな?」

「花梨が競泳できなくなった、奈美は罪悪感に苛まれてなかなか笑わなくなった、両親も嵐が来る度に悪夢にうなされると教えてどうなる? 金、積ませるか? 慰謝料を払わせる?」

「お金じゃ解決できないよ」

「……そうだな、金で何とかなるなら俺だってやってる。あぁ、うんざりする、もうたくさんだ!」

 修司が踵を返す。と、そこにーー。