翌朝、私が起きると花梨ちゃんの姿は無かった。

「え、病院へ行ってくれたの?」

「そうなのよ。雨が強くなる前に病室から荷物を持ってくるって張り切って。奈美ちゃんが起きてからにしなさいと言ったんだけど」

「私がやるのに。なんだか申し訳ないな」

 母の病室には私も行くつもり。いつ島に戻れるか分からない為、病室をどうすべきか相談したい。それと晴臣さんが尋ねてくれたかの確認もしたかった。

「朝食食べて、私も追いかけてみる」

「そうしてくれる? 花梨はこうと決めたら一直線だから」

 おばさんは両手を真っ直ぐ伸ばし、猪突猛進を表現する。温かいご飯とお味噌、焼鮭がテーブルに並ぶと腹が空いてはなんとやら、お腹が鳴った。

「おばさんと話したら楽になったみたい。食欲も出てきたよ」

「それは良かったわ。さぁ、召し上がれ」

 いただきますと手を合わせる向こう、おじさんが台風情報を確認しながら言う。

「今夜あたり直撃するなぁ。はぁ、この間、来たばかりだっていうのに」

「こればっかりはどうしようもないじゃない。あぁ、そうそう奈美ちゃん。病院に行ったついでに修司へお弁当を渡してくれない? 頼まれたのよ」

「うん」

「修司ってば急に言うもんだから凝った品は作れなかったけど」

 当直の差し入れは私が担当していた。おばさんが作っても別におかしくないものの、朝比奈兄妹は私を病院へ来させたくないようなーー。

(そんなまさか、ね)

 私を気遣ってくれているだけ、そう思直す。うん、二人がそんな真似するはずない。