「あなたのお母さんも西園寺さんに相応しくないって身を引いた。“私なんか”が口癖で、おばさんを苛々させたものよ! 結局、西園寺さんへ告白しないまま終わったのだけど」

「だからこそ、お母さんはお父さんに出会え、愛し合って結婚したんじゃない?」

「えぇ、奈美ちゃんのお父さんはお母さんを丸ごと包み込んでくれる人で、あなたみたいな素敵な娘を授かった。結果的には西園寺さんと関係が発展しなくて良かったんだと思う」

 写真に二つの家族が映る。現役時代も引退後も皆で私を支え、迎え入れてくれた。
 晴臣さんへの気持ちに嘘はない一方、後ろめたさが拭えない。

「西園寺さんの息子さん、自分が初恋の女性との間に生まれたんじゃないかと調べにきたの」

「じゃあ、私と晴臣さんは?」

「違う、兄妹じゃない、そこは断言できる。どうやら西園寺さんが奈美ちゃんのお母さんとの思い出を大切にしていたみたいで。島では見慣れない美少年が現れ、それも青い目をしていたものだから、ちょっとした騒ぎになったわ」

「お母さんが浮気したんじゃないかって?」

「とんでもない、島で一番のおしどり夫婦にそんな疑いを持つ者は居なかった。西園寺さんの息子さんには不思議な魅力があり、寂しそうな雰囲気に吸い込まれるみたいだった。花梨なんて彼を見るなり王子様だと騒いじゃって」