「晴臣さんが母に?」

 西園寺さんの息子ではなく晴臣さんと呼ぶとペン先が止まる。

「そう、そうなのね、どうしたって二人は惹かれ合うのか……」

「? おばさん?」

「奈美ちゃん、おばさんからも聞いてもいい?」

「いいけど」

 話の腰を折られ若干不満だが、頷いた。

「奈美ちゃんは西園寺さんの息子さんが好き?」

 ストレートな言い方に私はどんな顔をしたらいいのか、迷う。

「ひとまず修司や花梨の事は置いておいて、奈美ちゃんの素直な気持ちを聞かせてちょうだい」

 膝上に手を乗せ、背筋を伸ばす。私はおばさんをしっかり見据えると返事した。

「はい、晴臣さんが好き。彼と釣り合わないのは分かってる。けど好きなの」

 どうしてだろう、おばさんに対してだと飾らない言葉がするする口をつく。

「恋人になって将来を共にするとか、そういう夢は見てないし、望んでもしょうがないって知ってる。それでも想っていたい。報われなくても忘れたくないーーごめんなさい」

 頭を下げた。

「なんで謝るの? 奈美ちゃんは悪い事なんかしてないでしょう?」

「だって私、修司と……」

 付き合っていた、まで言わなくとも、おばさんは承知する。

「修司が奈美ちゃんしか見てないっていうのは鈍いお父さんさえ気付いている。実はね、あんなのでもいいからお見合いしたいと言ってくれる娘さんも多くて。奈美ちゃんに振られても貰い手はありそうよ」

「うん、修司は人気がある。私なんかいつまでもいつまでも想って貰う価値ない」

 おばさんは私の隣へ移動してくる。その際、壁に飾ってあった写真も持ってきた。