「昼間の仕事も何回か変えたりしたけど、全然お金がたまらんくて。……居酒屋で働いたこともあるんよ。……でも、過労かなんかでノドが変になって、熱が出たり……そうなったら昼も休まなあかんかって、病院代でもお金減るし……」

「それでキャバクラ?」

「……うん。店が終わったら、店内で寝かせてもらえるし……ちょうどよかってん。……今はもう家があるし、居酒屋とかでもええんかもしれんけど、私には頼る親もおらんから、いざって時のために貯金はしときたい」

目をつぶってる私の髪の毛を、すくい上げるミツルの指。優しい手つきが、余計に眠たくさせてくる。

うっすら目を開けると、窓の外を見てたミツルの顔はこっちに向いてて。

ぼんやり見上げてたら──

「お前、ちゃんと頭洗ってへんやろ」

まったりとした空気を壊すような言葉が降りかかる。

「……は?」

予想外な言葉で、眠気が吹っ飛んだ。

なんやねんコイツ、って思った。

「洗ってるから」

「洗えてへんよ。毛穴詰まっとるし。職業上、俺はそういうとこ見るからな」

「……もういい。気安く触らんで!」

ミツルの手をはらいのけ、寝返りをうつ。

背中を向けると、喉を鳴らして静かに笑う声が聞こえてくる。

こんなヤツに話すんやなかった。心の中でそうつぶやいて、私は少しの間、体を休めてた。