「ごめんな、こんな話。……そういうわけやから、私のことは指名せんと入って」

友だちが先に来店されてることを思い出した私は、長々話すのをやめ、電話を切ろうと考えた。

すると、

「それじゃ──」

「車がないから帰られへんだけで、仕事はもう終わってんねやろ?」

ミツルは私の声をさえぎり、状況を確認してくる。

「うん、もう私服やし。でも指名されたら……多分、復帰せなあかんなるから」

指名はしないでほしい。その気持ちで頭ん中がいっぱいやった私に、ミツルは「せえへん」と答え、もうひとつ質問してくる。

「店からは出れるん?」

その言葉で、やっと、私はミツルが何を考えてるのかを察した。

「……タクシー呼んで帰ることも出来る」

これから言われることがわかってもうて、思わず、帰る方法はあると口にしたけれど、

「じゃあ、タクで帰るって店の人に言うて、出といで。近所のコンビニにおるから」

ミツルは間髪入れずにそう返してきた。