「体調悪いん?」

「……そうじゃないけど、もう私服やし」

「あ、そうなん。……明日も仕事け?」

「うん」

ミツルは私の勤務時間が終わってることを知って、小さく息をついてた。

でもすぐに聞いてくる。「何で帰るん?」と。

「送りの車」

「あー、店の?」

「そう」

送迎車のことを聞いた彼は、そのまま黙り込んだ。

沈黙が流れて、私はそれを埋めるように言葉を付け足す。「なかなか帰らせてくれへんけど」と。

「なんで? 混んでんの?」

「……それもあるけど。今日は店長を怒らせてもうたから、他の子が帰る頃まで車は出さへんみたい」

愚痴ってしまった。私には車を出さんと言うた店長への不満が、次から次へと口からこぼれる。

ミツルは何があったのか気になったんやと思う。理由を聞いてきたから、私も正直に話した。

帰りたくて指名のお客さんを早めに帰したことや、上がり待機になってすぐに帰らせてもらえん話。

そして、上がり待機から復帰しても、指名交渉をサボったこと。それで店長を怒らせてしまい、帰れないまま非常階段で待ってるってことも。

客でもある相手にそんな話までしてもうたのは、私がミツルのことを客として見てなかったからやと思う。

最初の出会いが二次会じゃなく、キャバクラやったら、絶対にそんな話はしてない。知り合いというか、友だちのように思ってるところがあった。