シューくんは取り皿と箸をテーブルに置くと、再度、私に目を向ける。
「それ全部、マイちゃんやってんな?」
答え合わせをするかのような問いかけ。
「……」
何も返せずにいると、静かに聞くだけやったムッちゃんが口を開いた。
「ミツルくん、今彼女おらんねんて。だから──」
そう話し始めたけれど、シューくんはムッちゃんの腕に手を添え、ストップをかけた。
そして、ひと呼吸置いてから、続きを口にする。
「ミツルってさ、マイちゃんに出逢った頃とか……だいぶ遊んでるヤツやってん」
シューくんの言葉で振り返ったのは、
“番号、教えて?”
ライターを返すふりをして連絡先を聞いてきた、ミツルの姿やった。
初めて目を合わせたときも、私を獲物にするようなギラギラした視線を送ってきて、番号の奪い方も慣れてそうやった。
「そんな感じやったな」
遊んでたと聞いても、全く驚かへん。やっぱりな、と思う程度。
「でもそれは“彼女は作らんと遊ぶだけでいい”って割り切ってたからなんやし」
そう言って、シューくんはミツルの学生時代を教えてくれた。
「アイツ、高校んときの彼女でだいぶ苦労してん」
「……“苦労”?」
「彼女、セフレを作るような女やって」
「あぁ……」
相づちはうってるけど、本音を言うと、昔の話なんて聞きたくない。
その人のことを引きずってるって話やと、複雑な気持ちになると思うから。
でも、シューくんは、そのときのことから話したいようやった。