そっから、私ら3人は、シューくんのバンド活動の話や、ムッちゃんの職場の話など、たわいない話で盛り上がっててんけど──

「これ飲んだら、私は先においとまするな」

3杯目の酒を注文したあと、私はふたりの時間を考えて、先に帰ることを伝えた。

その言葉で、ムッちゃんはシューくんに目を向ける。

「言わんでいいん?」

問いかけられたシューくんは、私に向いて姿勢を正した。

「何? なんかあるん?」

急に改まられたことで、私は首を傾げた。

「今日ここにマイちゃんを呼んだんは、俺がムッちゃんに頼んでん。マイちゃんと話す機会を作ってくれへんかって」

「あ、そうなん?」

何を言われるのかなと、続く言葉を待ってたら──

「ミツル、覚えてるやろ?」

シューくんはその名前を口にして、私の顔色をうかがってくる。

「……うん、覚えてるけど」

胸の奥がズキッとする。

でも平静を装ってた。

シューくんは、私のことをじっと眺めたあと、料理を取り皿に入れながら話し始める。

「俺、当時はさ……マイちゃんのことよく知らんかったし、アイツの話に出てくる子がマイちゃんのことやとは思ってなかってん」

「……」

「でも、こないだムッちゃんから、マイちゃんが岸和田で住んでた話や、キャバで働いてたことを聞いてな。そこでやっと、全部が繋がったっていうか……」

「……“全部”?」

「アイツ、結婚式のとき、マイちゃんのこと口説いとったやろ? それは見ててんけど。そのあと、キャバにハマってるって話をツレからも聞いてて……。でも、本人からは岸和田から岬まで送ってる女のことしか聞いてへんから」

「あー……」

「“コイツ、あっちこっちに手ぇ出してんなー”としか思ってへんかってん」