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「レイは将来何になりたいの」



 身体を引き寄せて、男は私に問いかけてきた。

 素肌が触れ合う。それだけで泣きそうになるのは、彼との別れを無意識のうちに考えていたからかもしれない。




 死ぬと、すべてなくなる。

 このぬくもりも、きっと彼からは感じられなくなってしまう。



 言葉も、においも、表情も、視線も。

 この先、同じものを感じることはできなくなるのだ。




「……大人になれるかな、私」

「そーか。そこからか」

「うん、」




 時間は止まらず流れてゆく。

 待ってくれない世界の中で、私は歳を重ねていかなくてはならない。




 ─────生きているかぎりは。





「俺たちが今見てる星の光は、ずっと昔の光なんだと」

「ずっと昔って?」

「そりゃずっと昔だろ。とにかく、俺たちが生まれるよりずっと前だよ」

「なにそれ」




 意味のない、適当な会話だけを垂れ流す。


 しばしの沈黙がおとずれて、自然と夜空を見上げていた。