ハートの形の花火なんて、嘘。

自分からこんな大胆なことしちゃうなんて、と戸惑いながらも、顔を上げてくれた一瞬の隙に私はお兄ちゃんの唇にキスをした。

「こういう…こと??」

正解なんて分からないけど、ぎこちなくそう尋ねるとお兄ちゃんは満足そうに言った。

「ん。許す」

「へへっ、お兄ちゃんかわいい」

「うるさい」

耳に触れるお兄ちゃんの分厚い胸板。

少し引っ付けるとドクンドクンと規則正しいリズムが聞こえてきた。

「お兄ちゃんの心臓の音…、大きい」

「うっ、うるせぇ!」

楽しみにしてた花火大会。

行けなかったけど、今日は私にとって……

絶対に忘れない日になった。

孝宏さんが、私を引き取ってくれなかったら、私はお兄ちゃんに出会うこともなかった。

お兄ちゃんを好きになることもきっとなかった。

パパ…。

私ね。

今すっごく幸せだよ。

家族が出来たの。

あ。くたくたくまさんっていう、ぬいぐるみも一緒だよ。

あと友達も出来たし。

好きな人も出来たの。

毎日すごく楽しいよ。

たまにパパに会いたいなって悲しくなって泣いちゃう時もあるけど。

頑張って前向くからね。

お空の上からずっと見ててね。