「うつっちゃうよ…風邪」

「うつしとけ」

そしてもう1度。

お兄ちゃんの胸の中で甘いキスが落とされた。

花火の音なんかよりもずっと

自分の心臓の音が大きく感じた。

今頃。

クラスのみんなと見てたのかな、なんて思ったけど、どうしてか今この時間が……、

世界で1番幸せなんじゃないかと思ってしまった。

この時間が永遠に続いて欲しい。

心の底から、強くそう思っていた。

「お兄ちゃん…」

「ん?」

「さっきはごめんなさい…」

「やだ」

「えっ…」

即答だった。

「すげぇ傷付いた。だからやだ」

ちょっと拗ねたようにそんなことを言うお兄ちゃんは、なんだか子供みたいだった。

「うぅっ、仲直りしたいっ…、さっきの大嫌いは嘘で、本当は大好きなのっ」

ちょっと可愛く言ってみたつもりだったけど効かなかった。

「や、だ」

「えぇっ…、どうしたらいいの…」

私一応病人なのに…っ

大目に見てよー。

「自分で考えたら?」

意地悪そうに口角を上げて目を細めるお兄ちゃん。

あぁ…これドSの目だ…っ

自分で、って言われても…

どうしたら…

少し考えて、私は窓の外に視線を移した。

「あっ、お兄ちゃん…っ、ハートの花火…」

「ハート?​───────…んっ」