様々な嫌な憶測が胸の中で飛び交って、さっきようやく止まったはずの涙がまた溢れ落ちた。

「お兄ちゃんっ、ぐすんっ、ごめんなさっ…、ひっくっ…、いい子にするから捨てないでぇっ…」

「…ったく。またお前はそんなこと言って…捨てないってば。ほら」

苦笑しながらそう言ったお兄ちゃんはカーテンをシャッと開けた。

「…っ」

視界が一気に明るく、きらびやかになる。

​────お兄ちゃんは私を捨てようとしてた訳じゃなかった。

連れてこられたのは、隣の部屋。

孝宏さんの部屋だった。

「…っ」

お兄ちゃんが開けてくれたカーテンの向こう。

そこには……

「わぁっ…」

花火があった。

隣の家の木が邪魔して、少しだけ見切れちゃってるけど、それだけでも十分過ぎるほど目が釘付けになった。

「ここちょうど見えていいだろ」

私をお姫様抱っこしたまま、お兄ちゃんは優しく微笑んだ。

そして私が見えやすい位置に体勢を変えてくれる。

「うんっ。きれい……っ、​────んっ…」

それは突然のこと。

優しく唇を塞がれて、思考が停止した。

ゆっくりと唇が離れていく。

さっきまで目の前で打ち上がる花火に夢中だったのに。

今は、花火に照らされたお兄ちゃんの顔から目が離せない。