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「え、海外?」

まほが風邪で寝込んでいる頃。

親父が仕事の都合でしばらく海外に出張に行くと聞かされた。

一応予定では戻ってくるのは3年後らしいが時々様子を見に日本に帰ってくるとのこと。

元々仕事柄出張は多かったけど、海外は初めてな気がする。

今までは俺が小さかったこともあってほどほどにセーブしていたらしい。

「あぁ、ちょっと仕事でトラブってな……。やっぱり2人ここに残しては、きついか?」

「いや、別にいいけど」

「もしあれだったら、家政婦とか雇うか?」

「いや、そんなんいいって。金も掛かるし」

「そうか?」

ダイニングテーブルで軽い缶酎ハイを飲みながら親父が言った。

「響、ありがとな」

「なんだよ、急に」

「いや。いきなり女の子と一緒に住むの、年頃の男子高校生にはキツかったんじゃないのかってさ」

どうやら同僚の人にそんなことを最近言われたらしかった。

まぁ、それはごもっともな意見だ。

「親父が勝手に引き取ってきたんだろ?俺の承諾もなしに」

「はは、それはごめんって。ほら。うち母親いないだろ? 男の2人暮らしも貧相じゃないか」

「なんだよ、それ」

今思えば、小さかった頃の俺は無茶なことばっかりほざいていた気がする。

一時期のことだが、やたら妹を欲しがったり、だとか。

母親は、死んでしまったっていうのに。

親父だってまだ、悲しみから立ち直れてなかったかもしれないってのに。