泣いたせいで真っ赤になったまほの目を見つめる。

「俺とくたくたくまさんはな…? 実は血、繋がってないんだ」

これは……、俺が3歳の時に親父が出張先で見つけて買ってきたもの。

それ以来ずっと一緒。

他の生徒に取られたり、教師に取り上げられたりするとやだから、学校へは持ってかなかったけど、ご飯食べる時も。テレビ見てる時も。寝る時も。

肌身離さず持っていた。

俺の人生はこいつがいないと語れねぇ。

「でも俺は、1度もこいつを捨てようと思ったことなんてない。血の繋がりなんて、関係ねぇんだよ」

死ぬまで。

俺とくたくたくまさんは一緒だ。

今更手放すなんて、考えられない。

「まほ」

涙でびちゃびちゃになったまほの頬に手を伸ばす。

……こんなに泣かなくたっていいだろ。

…ったく。

しょうがない奴だな。

「これやるよ」

そう言って俺は…



くたくたくまさんを差し出した​─────。

「えっ……」

戸惑ったように、目を大きく見開いて瞳を揺らしたまほ。

「でもこれはお兄ちゃんの宝物…」

「いいんだよ、ん」

「…っ、なんで…」

「そのくま、ちょーだいって言ってきたのお前だろ?」

あの時はだめ!!って言ったけど。

誰だよ、こいつ。意味分かんねぇよ、ってなってたけど。今は……違う。