はっ……

お兄ちゃんだ……

暗闇の少し向こう。

視線の先にお兄ちゃんの姿が見えた。

暗い気持ちがパー、っと晴れていく。

「お兄ちゃんっ」

後ろからガバッ!と抱きついた。

暖かい……っ。

優しい温もりが身体にまとわりついて、ホッ、と息をついた。

​────その時だった。

「触んな」

「きゃっ……」

私の身体はいとも簡単に突き飛ばされてしまった。

「お兄ちゃん…っ? まほだよ!」

「あ?知らねぇよ」

そう冷たく言い放って、お兄ちゃんは私を睨む。

生ごみでも見ているかのような眼差しだった。

「えっ…」

混乱して、血の気が引いていく感覚が走る。

「なんでっ…、怒ってるのっ??」

私が勝手に家出たからっ…?

養子のくせに、全然いい子じゃないから?

空回りばっかしてるから……?

迷惑ばっかりかけるから……?

嫌になっちゃったの…?????

「あっ、待って……っ」

そのまま私を無視して、歩いていくお兄ちゃんに私は手を伸ばした。

でも、もう届かなくて。

追い掛けたいのに、足が動かなくて。

どんどん遠ざかるお兄ちゃんの背中を見つめて、思った。

あぁ……また…、



​───────…ひとりぼっちだ、って。