小さくつぶやいたお兄ちゃんは保冷剤をハンカチで包んで、痛いとこに当ててくれた。

「あ……ひんやりして気持ちいい」

「しばらくこうしてろ」

お兄ちゃんがそばにいる、ってだけで急に安心して、眠気が襲ってきた。コクリ、と頷いてなんとなくソファに横になる。

「お兄ちゃん…今日、学校は?」

うつろうつろな目で尋ねる。

時間はまだ14時過ぎ。

今日の帰りは夕方って言ってたはずなのに…。

「心配だから途中で帰ってきたの」

「えっ」

心配…

私のことが……??

「でも案の定これ。もー、お前はダメだ、って言ったことすぐやるよな」

ため息をひとつ吐き出しながらお兄ちゃんはせっせと制服を脱ぎ始める。

「で? なんで外出たんだ?」

私服に着替えたお兄ちゃんがソファ横にドサッ、と座りながら尋ねてきた。

無理矢理目線を合わせられて、真っ直ぐ見つめられる。

「…」

無意識に口を閉ざして、少しだけ目を逸らした。

……きあらちゃんに言われた言葉が少しだけ胸に刺さって。

‪”‬血が繋がってない‪”‬とか‪”‬養子だ‪”‬とか。

そんなのもうとっくに分かりきってたことのはずなのに。

改めて言われると、それは今の私にとってすごく怖いことだった。

もう私は…この世界で誰とも‪”‬繋がり‪”‬がない。