すっかりこの生活にも慣れ、安心したのはいいことだが、最近じゃいつもこうだ。

隙があったらベタベタベタベタ。

鬱陶しい野郎だ。

「んむっ…」

全然起きる気配がなかったので両頬をつまむ。

「いいから、起きろ」

すると寝ぼけ眼の目が俺を見つめた。

「お兄ちゃん…っ」

その瞬間、瞳がパー!と光り輝く。

「お兄ちゃんだぁっ…」

朝っぱらから俺の顔を拝めたことがよっぽど嬉しいのかニコニコしだした。

間髪入れずに、今度は俺の首にしがみつく。

そしてデロンととろけるように俺の上半身に馬乗りになった。

あー、もう。仕方ねぇなぁ!

そのまま抱き上げて1階に連れていく。

「お兄ちゃーん…。大きくなったらお兄ちゃんと結婚したい」

「やだ」

「えー……なんでー」

「俺は、胸がでかい超絶美人と結婚しますー」

最近やたら結婚をせがんでくるまほは、俺がこう言うと、

「んー…」

風船みたいに頬を膨らませて、拗ねる。

***

「おい、まほ。遅刻するぞ」

「待ってっ、あとちょっと!!」

朝食を食べ、一通りの準備が済んだ頃。

朝から玄関先が慌ただしいのは、今日はまほの中学の入学式だから。

親父は朝から大事な会議が入っているらしく、いまさっき出て行った。

なので保護者代わりで俺も、今日は同伴する予定だった。

もちろん最初は嫌がったが、まほちゃん1人じゃ可哀想だろ? と親父に散々説得されて今に至る。

「お兄ちゃん!!見てっ!かわいい?」

やっとヘアセットが終わったのか、セーラー服に身を包んだまほが弾むような足取りでやって来た。