俺に抱っこされた女はちっこい手でサツに手を振っていた。

でもすぐにぷにっ、と頬を俺の肩に埋めて寝息を立て始める。

起きたのはほんの一瞬だったらしい。

スースー…

耳たぶに寝息が当たって気持ち悪りぃったらありゃしない。

俺の襟元もちぎれんばかりに掴みやがるから息が詰まるんだよ!

このまま道端に捨ててやろうか、とか思うけどそうしたところでまたサツに保護されるのがオチだろう。

あー、もう。せっかくの休日が台無しだ。

ため息混じりに横目で女の顔に視線を向ける。

「…っ」

目は瞑ったままだが、何やら口をパクパクさせていた。

やがて、か細く小さな声が届く。

「……ぱぱ……………」

女の頬にはすっかりカピカピになった涙の跡があった。


***

家に到着して、女をベッドに下ろす。

下ろしたはいいが、なかなか俺の襟から手を離そうとしない。

「んー…」

んーじゃねぇよ、離せ!この野郎!!

首絞まるっつーの!!

俺のこと殺す気かよ!

やっとの思いでなんとか振り解き、女から距離を取る。

よほど疲れているのかぐったりとベッドに横たわっていた。