「そういえばあの時……久音くんナイフの向き、ちょっとだけずらしてた…」

「え?」

「あの時は私が強引にお兄ちゃんと久音くんの間に割って入って。結果刺されちゃったけど…
多分…私が割って入らなくても久音くんは自分で踏みとどまれてた気がする…」

てか…踏みとどまろうとしてたと思う。

沙奈ちゃんを取られたくない。

それが根底にあるから、色々間違えちゃった事もあったと思うけど。

でも​───────…

ーーんーっ、ほいひぃっ

ーーはは、良かった。でももう少しゆっくり食べな

ーーうん!


いい人だ、って信じたいな。

私だけは。

***

帰り道。

ふと金曜にきあらちゃんとした約束を思い出した。

「あ、そうだ。きあらちゃんが明日の放課後、家遊び来たいってー。いい?」

「あーきあらちゃんな。いいよ」

学校には、もう2週間ぐらい行った。

気が付いたら2年生に進級してて時の流れに驚いた。

今年も私はきあらちゃんと同じクラス。

この1年の件については全部正直に話したらきっとややこしいだろうから旅行行ってた、って事にした。

『えー?ほんとー?』って疑われたけど、何とかやり過ごした私。

元の学校生活も戻りつつあった。