帰ろうとしたその時。

倉庫内がなんだか騒がしくなった。

みんなの視線が1点に集まっていて、私もそちらを見やる。

「えっ……」

視線の先に佇む1人の人物とパチ、と目が合った。

「久音……くん…」

「おい、てめぇ……何しにきた!?」

久音くんを警戒しているみたいに後ろからお兄ちゃんに抱き抱えられた。

ギュッ、と力の籠るその腕は小刻みにプルプルと震えている。

「……」

久音くんは俯きがちに立っているだけで、特に何か危害を加えよう、という意思は見受けられなかった。

「狂乱火は潰しただろ!まだなんか​────」

「すみませんでした」

三波くんの声を遮って、久音くんが口を開いた。

「あ?」

「謝りたくて……」

そう言うと久音くんは私に視線に向けた。

「……まほちゃん。怖い思いさせてごめん」

「…っ」

「それだけ……言いたかったんです。響さんも、大事な妹さんをすみませんでした。じゃあ……」

くるり、と向きを変え、出口の方へ歩いていこうとした久音くんに

「まって…っ!」

何を思ったのか、私は咄嗟に叫んでいた。