「まほ、パンに何塗る?」

「うーん、甘いやつ!」

「あー、あれ昨日終わった」

「えー!」

朝食のバターが塗られたパンを1口かじって、それをゴクリ、と飲み込み、口を開く。

「ねね、孝宏さんいつ帰ってくるの?」

「来週だって」

私がいない間。

孝宏さんは1度も日本に帰ることなく海外に居たらしい。

……向こうで好きな人が出来たとかどうとか。

そんな話をお兄ちゃんに聞いて、頬が緩む。

孝宏さん、かっこいいもんなぁ…

きっと向こうでモテモテだったんだ……

「孝宏さんが再婚? しちゃったら寂しいな」

「何言ってんだよ」

お兄ちゃんが不機嫌そうに向かいでパンを頬張った。

「俺がいるんだからいいだろ、別に」

へへっ、お兄ちゃんヤキモチ妬いてるー。

「ねね、お兄ちゃん。私がずっと居なくて寂しかったでしょ!」

「はぁ? 寂しくねぇし」

「えー?」

「お前、俺がどんな思いで……」

そう言いかけて止めたお兄ちゃんは、テーブルに肘をついて私を睨んでいた。

「ん?」

「なんでもねぇよ」

「いてっ」

おでこに軽い痛みが走る。

なぜかデコピンされた。