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それから2人でタクシーに乗って、家まで帰った。

途中の車内でまほはウトウトしだして、1分もしないうちに頭が俺の肩に落ちてくる。

全身の力をとことん抜いて寄りかかってくるのにくたくたくまさんを握る右手の力だけはいつまでも弱まることは無さそうだった。

「沙奈ちゃん。着いたよ」

「…んっ」

到着した時に起こそうと肩をゆすったけど、起きなかった。

寝起きが悪いのは相変わらずのようだった。

そのまま俺はまほを抱き上げてタクシーを降りた。

久しぶりに感じるまほの体重に、込み上げてくるものがあったけど今はこらえる。

俺の肩に顔を埋めるまほからは可愛らしい寝息が一定の間隔で聞こえてきた。

「よいしょ……」

ソファに寝かし、ブランケットをかける。

熟睡のようで、まだ起きる気配はなさそうだった。

俺はソファのそばに腰を下ろし、その寝顔を見つめた。

「…」

……可愛いな。

髪もなんか伸びてるし。

顔立ちも、どことなく大人っぽくなった気がする。まだ幼さは十分あるけど。

起こさないようにそっと顔に掛かった髪をよけてやると、「んんっ」と軽く唸った。

その弾みで指に力が入ってしまったのか、握っていたくたくたくまさんからぷーという音が放出される。

おぉっ、やべ…

「……」

起きるかな、と一瞬焦ったけど大丈夫そうだ。

スースー眠るまほの寝顔に一息ついて、ソファに身を預けた。

やっと…





帰ってきてくれた​───────…