結局何も言ってやれなくてまた曖昧にすることを選び、話題を逸らした。

ぷー

カバンからそれを取り出して鳴らす。

「なにそれ!」

すぐにまほの意識はそっちにつられていった。

「触る?」

「うん!触る!」

こっちに向けて両手を伸ばしていたので手のひらにそれを置く。

「わーっ」

出しっぱなしの舌ベラを人差し指で触ったり、ダラダラしてる手足を動かしたり、こねくり回すように触っていた。

これ触ったらもしかしたら思い出すかな、とか思ってた自分もいたけど、それは無さそうだ。

「なんかくたくたしてるね!このくま」

目をキュッと狭めて、そう言ってくるだけだった。

ぷー

ぶー

「へへっ」

ぷー

ぷー

ぷー

飽きることなく無邪気に何度も音を鳴らしていて、懐かしい記憶が今まで以上に込み上げてくる。

「これかわいいっ、ちょーだい!」

すぐ欲しがるのな。お前。

出会った時もそうお願いされて「だめ!」と即答した自分が脳裏によぎる。

「ん。いいよ」

そんな訳ないだろうに、まほの腕でくた……としているくたくたくまさんまで不思議と嬉しそうに見えた。