「響…話してないのかよ」

「…いいんだよ」

多分まほなりに気を使ってくれた発言なのだと思う。

自分のことを沙奈と思ってしまってる今それは仕方ないことだ。

でも三波は黙ってられない性格。

何か言いたげな表情をしていた。

そしてその‪”‬何か‪”‬を言うべくすぐに口を開いた。

「この人はな。君のお兄ちゃ────」

「三波、よせ」

「でも……」

「もういい」

慌てて制した。

「言ったって仕方ないことだろ」

まほの中で俺は、‪”‬悪者さん‪”‬で。

久音が‪”‬お兄ちゃん‪”‬。

それでいい。

今事実を話したところで混乱させるだけな気がした。

俺は、まほが戻ってきてくれただけで嬉しい。

泣いてても。笑ってても。

手の届く場所にいてくれることが、何よりも嬉しかった。

それから警察に事情を聞かれたまほは、

『これは刺されたんじゃなくて、自分で刺しちゃったんです』

そう言って、久音のしたことを全部無かったことにした。