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「……ほ、まほ、まほ…っ!!」
「…っ」
気が付くと、私は病院のベッドの上にいた。
「分かるか!?」
真っ白な天井ばかりが視界を埋める中、悪者さんが身を乗り出して私を見下ろしている。
頬にポタポタと冷たい雫が落ちてきて、ギュッ、と目をつぶると悪者さんは焦ったように自分の目元を抑えた。
「あっ、わり…」
泣いてる……
私の、せいかな。
あれ? 私なんでこんなとこに……
あ、そうだ。
お腹……刺されちゃって…
それを思い出したのとほぼ同時。
ーーお前なんか沙奈じゃない……!!!!
ぼんやりする頭に容赦なく、あの時の記憶がフラッシュバックしてきた。
鋭く過ぎった記憶は全て胸がチクチクするもので、せき止めるものなど何も無く一気に涙が零れた。
涙が目尻を滑って枕の上に吸収されていく。
「ふぇっ…」
一瞬でへにょ。と口角が下がってふにゃふにゃな声が漏れる。
「ふぇー…っ、うぅっ……」
嫌われちゃったっ。
久音くんに嫌われちゃったっ。
消えろ、って言われちゃったっ。
そんな酷い言葉、言われたことなかった。
まだ信じられなくて夢なんじゃないかって考えるけど、それは夢にしてはあまりにリアルで。
あの時感じた胸の痛みもまだしっかり残ってて……だから…夢じゃない、んだろうな。
仰向けで無防備に泣く姿を見られたくなくて両手で顔を覆った。