ここで話を別に逸らしても、あとあと三波はしつこく詮索するだろう。

昔からねちっこい性格してやがる。

「…親父が勝手に友達の娘? 引き取ったんだよ」

「おぉ!?ビッグニュースじゃん!!」

あっという間に、目を輝かせて興奮気味になった。

「そんなんじゃねぇよ」

「てか、年頃の男女が1つ屋根の下って大丈夫なのかよ!?」

「俺が手出すとでも?」

「まぁ、そうは言ってねぇけど…、かわいい子?」

「かわいいもなにもねぇよ。最近までランドセル背負ってた幼稚な野郎」

確か来週中学に入学するとかどうとかって親父が言っていた。

あー、てか俺もそろそろ学校か。だる…

まぁ、しょっちゅうサボってるけど。

「今朝だって勝手に家飛び出してってさ」

「え?なんでだよ?」

「俺のプリン勝手に食べやがったんだよ」

あぁ!!思い出すだけで腹が立つ!

俺の楽しみ奪いやがって!

「おまっ…、まさか怒ったのか!?」

「当たり前だろ!?」

「そんなことで怒んなよ…」

「あっ!あのぉ…」

「あ?誰だ、こいつ」

俺と三波の会話に割り入るように入ってきたのは、小柄でへにょっとした奴だった。

肌も白くて、なんだか気弱そうだ。

初めて見る顔に身を見張る。

すると三波がそうそう!と思い出したように手を叩いた。

そのままそいつの肩に両手を置いて、俺の正面に立たせる。

「こいつが、響に言いたいことがあるんだと」

「言いたいこと?」

「なんだ、タイマンでもはりにきたのか?そんなヘニョヘニョもへじみたいな身体じゃ一瞬だと思うけ​​────」

「はじめまして!中野久音(なかの くおん)です!僕ずっと響さんに憧れてて……っ」