地面に打ち付けた肘をさすって、立ち上がろうと地面に手をついたのと同時。

背中に手が添えられた。

申し訳なさそうに眉を下げながら「…ごめん」と謝った悪者さんは私を起き上がらせてくれた。

なんか……あまりに優しい顔でこっち見てくるから…、不思議な気持ちになる。

さっきまで早く逃げなきゃ!って思ってたけど……今はそうでもないや。

悪い人には見えなかった……。

「へへっ、転んじゃったっ、大丈夫っ」

まだズキズキと痛む肘。

本当は涙が出そうなくらい痛かったけど強がって笑って見せた。

「ほんとか!?」

「うんっ」

きっと、悪い人じゃない。

でも……

ーーあいつは、狂乱火の敵なんだ

ーーうちを潰そうとしてる。だから忘れろ

久音くんの不安そうな声が脳裏をよぎって、やっぱりいい子で家にいなきゃ、と思った。

「あ。悪者さん…。久音くんに怒られちゃうかもだから、私おうち帰るねっ、まほちゃん早く見つかるといいね」

ムクッ、と立ち上がって悪者さんに背を向けた。

そうだ。

久音くんには忘れろ、って言われてたんだ。あんまり長くお喋りしてたらあとで怒られちゃうかもしれない。

「えっ、あ、ちょっ……っ」

その時だった。

ビリビリビリビリ……!!!!

「いっ……」

痛々しい音が聞こえて、かと思ったら悪者さんが地面に膝をついていた。