大変……

ドアの向こうでお腹を抑えてうずくまってる悪者さんの姿が浮かんで、心配になる。

「大丈夫!?」

「大丈夫じゃねぇ……ちょっと…トイレ貸してほしいから、ここ開けてくれないか…?」

「うん!分かった!」

内側からは開けられないけど、緊急事態だし……、もしかしたらハサミで鍵壊したら開けられるかも!と思って部屋の奥からハサミを持ってきた。

……んだけど。

鍵を捻って、ダメ元でドアノブを動かしてみると……

ガチャ。

あれ? 開いた?

この前は鍵を開けても、もう一段階ロックが掛かっているようで出られなかったけど、今日はそのロックを久音くんが掛けてなかったみたい。

今朝は急いで家出てったし、かってる暇なかったのかな?

って!今はそんなことはどうでもよくて!

「悪者さん!トイレはこの奥にあ​────」

家の中に招き入れようとドアを大きく開けた直後。

間髪おかず、私の身体は暖かい温もりに包まれていた。

「えっ……」

なぜか悪者さんに抱きしめられてて思考が停止する。

もしかして……

お腹痛すぎて死んじゃった!?

「悪者さん!大丈夫!?」

「……」

返事はない。

でも……

「…っ、ぐすんっ……よかった…っ、」

代わりにすすり泣く声が、切なく鼓膜を撫でた。