【響side】

中学の頃。

この街を牛耳っている、とかいう奴とタイマン張って、いとも簡単に勝利を手にした俺。

暇つぶしに程度に暴走族”‬Tired Bear‪”を作った。

それからは俺の腕に見惚れた下っ端達が次から次へと加入し、気が付けば、この街トップの最強暴走族とも噂される巨大勢力となった。

「総長!!ご無沙汰しております!!」

「お疲れ様です!!総長!!」

「お疲れ様です!!」

昼過ぎ。

バイクを数分走らせ、たどり着いたのは海辺にひっそりと佇む倉庫。

俺らの溜まり場だ。

中には数十人の下っ端がいて、俺の姿を見るなりサッと1列に並び、腰を90度に曲げ、一斉に頭を下げた。

ただ1人を除いて。

「響。久しぶりだな〜」

眩しいくらいの金髪に、耳についたジャラジャラとしたピアスが視界に飛び込んでくる。

片手を上げて、ヘラっとした笑みを浮かべるこいつは間宮三波(まみや みなみ)

俺が率いる暴走族”‬Tired Bear‪”の副総長、兼俺の幼馴染だ。

「あ。まだその汚ぇぬいぐるみ持ってんのかよ」

俺の手元に視線を落とした三波が小馬鹿にするように言った。

「うるせぇなぁ。口出すな。昨日も女に奪われそうになってむしゃくしゃしてんだよ」

みんな寄ってたかって、俺とくたくたくまさんを引き剥がそうとする……

生き別れがどれだけ残酷なことか分かってないんだ、こいつらは!

「女?」

すぐにしまった、と思った。

言うつもりなんてなかったのに、つい口が滑りやがった。