でもそれ以上に、

‪”‬まほが…、生きていた‪”‬

それが何よりも、嬉しかったのだ。

望みはまだある。

生きてさえいてくれたら……

そうしたら…、また前みたいに……

前みたいに、まほと暮らすんだ。

だってまほは…

ーーお兄ちゃん。大きくなったら結婚してっ


俺のこと…、すげぇ好きなはずなんだ。

こんなに会えない時間が続いて…、平気な訳ねぇ。

どれだけ月日が流れても、あいつは俺のことが大好きなんだ。

自信過剰にも過ぎない、そんな確証のような期待はどうにも捨てられずにいた。

でも……

あの時。

俺を見つめるまほの目は……、

まるで‪”‬知らない誰か‪”‬に向けるそれと、同じに見えた。

「三波。“沙奈”って…」

隣を歩く三波も同じことを考えていたみたいで、スマホに何やら入力していた。

「あぁ。まほちゃんのあの様子。どう考えても響のこと覚えてなかったし自分のことも‪”沙奈‪”‬って名乗ってた。何かしら手を加えたとしか考えられない」

「……手?」

「あんま考えたくないけど財前グループってのは昔から黒い噂が耐えないらしい。ここだけの話、記憶操作? の研究とかいうよく分かんねぇ気持ち悪いこともしてる、とかどうとか」