沙奈……

さっきまほが自分のことをそう名乗っていた。

どういうことだ…。

一体何が起こってんだよ……

頭は混乱するばかりだった。

「ちなみに僕の正体、もう分かってます?」

「あ? 正体?」

「ご存知ですよね? 狂乱火」

誇らしげに久音は笑みを浮かべる。

「狂乱火……? まさかお前…」

そういうことか……。

少し前にうちが潰した族、狂乱火。

一時はそれで解散したと聞いていたが、またしばらくしてから再結成し、うちを狙っているという情報が入ってきた。

思い返せば、その時期と久音がうちにやってきたのは同時期だ……。

「狂乱火って、もしかして……」

「今頃お気付きですか? 鈍いですね。はい。僕のもんです」

ククッ、と不気味に笑い、喉を鳴らす久音。

全ての点と点が繋がった気がした。

「狂乱火潰された腹いせか……!!」

俺らの前で見せていた顔とは打って変わっていて、こちらが何を言っても一切動じない久音。

それどころか、見下すような眼差しで俺らを見ていた。

「ふざけんな! まほ人質に取って、こんなの卑怯だぞ…!今すぐ返せ……!!!」